テレビでよく聞く「過払い金」って何?
最近、テレビのコマーシャルを見ていますと、法律事務所や弁護士事務所、あるいは司法書士事務所の広告で「過払い金返還」に関する広告を多く目にします。それはテレビのみならず、新聞の折り込みちらしでも最近では多く目にするようになってきました。しかしそもそも、「過払い金」とは一体何なのでしょうか。
原因はグレーゾーン金利
過払い金を知るためには、まずは過払い金を発生させる原因となっているものを特定しなければなりません。過払い金を発生させている原因となっているもの、それは「グレーゾーン金利」というものです。
名前から言って非常に曖昧模糊とした感じの金利ですが、実際にこれは非常に曖昧なものであったのです。
利息制限法
グレーゾーンとが何かを知る前には、3つの法律をしっかりと知っておかなければなりません。利息制限法、貸金業法、そして出資法の3つの法律です。この3つの法律が複雑に入り組んだ結果、グレーゾーン金利が誕生してしまいました。
まずは利息制限法です。利息制限法では、「お金の貸し借りの際の利息の契約に関して、所定の金利を越えた場合にはその超過部分は無効とする」という規定があります。定める所定の金利は、元本がいくらかによって異なり、元本が10万円未満の場合には年20%、10万円から100万円の場合には年18%、そして100万円以上の場合には年15%と定められているのです。
無効となるため、本来であれば支払う義務はない超過部分ですが、この超過部分を「任意」で支払った場合には、超過部分の返還請求を起こすことはできないとされています。しかし、この規定は現在では廃止されています。利息制限法の肝となるのが、罰則規定です。法律違反を犯したとしても、刑事罰が科されることはありません。
出資法
出資法は、出資を受け入れたり預かったお金やそれに伴う金利を取り締まる法律のことです。出資法によれば、貸金を生業とする人が貸付を行う場合には、年29.2%を越える金利で貸付を行ってはならないとされています。
もしこれに違反をした場合には、5年以下の懲役もしくは1,000万円の罰金が科されます。この両方が科される場合もあるのです。
出資法の場合、実際に貸し出すだけでなく、貸し出す前に契約をした時点で出資法違反となります。多くの貸金業者では、出資法に違反をしないように、年29.2%の数字だけはしっかりと守って貸付を行っていました。ちなみに、29.2%を超えて貸付を行っている貸金業者は、いわゆる「ヤミ金」です。
また、質屋もこの金利を越えて貸し出すことが一般的となっていますが、決して法律違反ではありません。質屋に関しては別途、「質屋営業法」があり、年109.5%との上限金利が設定されているのです。質屋には質草の管理コストがかかり、また3ヶ月未満の短期貸付けであることから、例外となっています。
貸金業法
利息制限法と出資法は、貸金業者の貸付する金利に関して定めていたものですが、貸金業法では「みなし弁済」について明記されていました。これは貸金業法の43条に記載されていたもので、簡単に言えば、利息制限法に定める上限金利をオーバーしたとしても、所定の条件を満たせば「有効な利息の債務」とするというものです。
これがみなし弁済であり、返還請求をすることはできません。ちなみにこのみなし弁済を認めた貸金業法43条は、現在では廃止されています。
グレーゾーン金利
ここまでで、法律の食い違いに気づいた方もいることでしょう。出資法では年29.2%以上の金利で罰則がある一方で、利息制限法では年20%以上の金利で貸し付けたとしても、みなし弁済であれば罰則規定はありません。
つまり、年20%から年29.2%の間で貸付をしていれば、利息制限法には違反していますが、出資法には違反していないので、罰則はありません。つまり、刑事罰の対象となるわけではないグレーな部分とする年20%から年29.2%の金利帯を所謂「グレーゾーン金利」と呼び、グレーゾーンの金利に基づいて支払われた利息が「過払い金」とされています。
現在の金利と過払い金の状態
もちろん、このような食い違いを国も無視しているわけではなく、現在ではおおむね解消されています。2010年、出資法の上限金利を年29.2%から年20%に引き下げをしました。これによって、利息制限法の上限金利と金利が一致することになりました。
利息制限法や貸金業法に関しても、みなし弁済を認めた条項を削除するなどして、現在ではほぼグレーゾーン金利は撤廃されています。そのため、現在でも20%を越える金利で貸し付けている貸金業者があるとすれば、返済の必要が無い闇金融となるのです。
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